熱溶融積層方式 (FDM)の3Dプリンターで、とても精度の高い造形物を作ろうとすると1番問題になるのが振動です。
特にヘッドが動いて止まった時の慣性運動による振動は造形精度を悪くしますので、XYZステージ型のFDM方式の3Dプリンターではヘッドの移動スピードを上げるとバックラッシュが大きくなり造形精度が更に悪化します。
それを最小にしたFDM方式の3Dプリンターが今回紹介します「IVI」が採用しているデルタ型と呼ばれる3Dプリンターで、モーターが動く事に伴うバックラッシュは上下方向(Z軸方向)にしか働きませんので、高速でヘッドを移動させてもXYZステージ型に比べると振動も少なく造形精度も維持できます。
ただそれ以外にも造形精度の前に造形を失敗すると言う事が3Dプリンターではよくあるのですが、この「IVI」はクローズドループ制御にて造形の失敗もありませんので、フィラメントの無駄も出しません。
クローズドループ制御
クローズドループ制御と言うのは位置決めの制御方式の1つで、3Dプリンターで言えばスティピングモーターを使いヘッドやベッドを動かしていますので、コントローラーからは何ステップ移動せよ、と言う命令がモーターには流れます。
ところが何かに引っ掛かったり、ベルトが滑ったり等のアクシデントがあったりして本来移動するはずだった場所まで動かなかった場合、当然の事ながらヘッドの位置はズレますので、そのまま造形を続けても位置が既にズレてしまっている為に変形したものしか出来ませんから、何時間かけて作ったモデルも破棄と言う残念な事になります。
一方クローズとループ制御はモーターからどれだけ動いたのか、何ステップモーターは回ったのかと言う情報がコントローラー側にフィードバックされますので、もし指示した分だけモーターが回っていなければコントローラーはその修正分の駆動信号を送りモーターを動かして位置を正しい位置へと導きますので、ヘッドが何かに引っ掛かったりしても失敗する事がないのです。
SLA方式と遜色ない造形精度
この「IVI」のXYZ位置精度は15μmとFDM方式でも上級クラスの3Dプリンター並の位置精度でスペック的には珍しくないのですが、300mm/sでヘッドを移動させた時の位置精度が、他のFDM方式の3Dプリンターでしたら1ケタ精度が落ちるのですが、この「IVI」は10μmとFDM方式では考えられない位置制御を誇ります。これもクローズドループ制御のおかではないでしょうか。
そして最大造形サイズは直径210mm×高さ220mmの円筒形サイズになりますので、かなり大きなフィギュアの造形もSLA方式(光造形)の3Dプリンターと遜色ない精度で造形する事が可能です。
オプションヘッドで加工も可
そしてまたこの「IVI」には出力2500mWのレーザー彫刻ヘッドと、最大ヘッド回転数8000RPMのCNCドリルヘッドの2つがオプションで用意されています。
そしてレーザーやドリルヘッドで素材の表面に彫刻をしたりドリルヘッドは深く彫り込んで立体的な彫刻も行えるのですが、前述した様にクローズドループ制御でヘッドの位置制御が精密なので他の同等機能を持った3Dプリンターとは比べものにならない程の細かな彫刻を施す事ができますので、もし詳細をご覧になりたい方は下記URLをご覧ください。
https://www.kickstarter.com/projects/ivi3d/ivi-the-closed-loop-3d-printer
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